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上野 由日路

2019年7月11日

AUTO ALPA 50mm F1.7 【オールドレンズレビュー vol.02】

SWISS、ピニオン社のALPA(アルパ)といえば豪華で多岐にわたるレンズラインナップを持ったカメラシステムとして知られている。アンジェニューやキノプティック、オールドデルフト、キルフィット、シュナイダー、ケルンなど世界中から集められた銘レンズが広角、標準、望遠、マクロを網羅している。

その中でもALPAを代表するレンズがKERN社のマクロスイターだ。最高の標準レンズという呼び声も高いマクロスイターを使いたいがためにアルパを愛用するユーザーも多かった。

このアルパシリーズだが最後期シリーズは日本のチノン社がOEM生産していた。私事になるが筆者が一番初めに自分のお金で買ったカメラがチノン社製のコンパクトカメラであった。当時はカメラではなく車に夢中だった私はチノンのカメラを持ってスーパーカーが展示してあるイベントに赴いては夢中になって写真を撮った。今でも実家にはその当時撮ったランボルギーニカウンタックやミウラ、イオタなどの写真がある。

脱線してしまったが、この時代チノン社はカメラ生産はしていたもののコンパクトやOEMが主体であった。特に海外向けのOEMを強化していてアルパの最終型Si2000/Si3000シリーズもチノン製だ。そのチノン製のOEMカメラSi2000/Si3000の標準レンズが今回紹介するAuto ALPA 50mm F1.7だ。ちなみに家に同時代の兄弟機REVUE FLEX ACⅠがあったので写真を撮ってみた。Si2000とディテールは異なるが同じベースのカメラである。この写真から見てわかるとおりALPAのSiシリーズは普通のカメラである。これまで高級カメラシステムとして名の通っていたALPAが突然発表した新型が普通のカメラであったのだ。当時はかもなり不評であったと思われる。

当然AUTO ALPA 50mm F1.7も当時かなり不評であった。しかし皮肉なことにAUTO ALPA 50mm F1.7には優秀な双子の兄弟が存在する。それが同じ外見のマクロスイター”C”50mmF1.9だ。このレンズは生産本数が僅か83本と少ないため幻のレンズと呼ばれている。M42マウントであったためミラーレスカメラが登場するまでは他社一眼レフカメラで使える唯一のマクロスイターであった。

有名ブランドの落ちこぼれレンズにして双子の兄弟は超優秀というかわいそうな境遇のAutoALPAの50mmF1.7であったが最近再評価が進んでいる。それは他のレンズと同じくミラーレスデジカメの登場の影響が大きいが、そもそもこのレンズの評価が不当であったことも影響している。AUTO ALPA50mm F1.7はコンパクトマクロレンズだ。最短撮影距離が0.27cmで1/3倍までのマクロ撮影が可能だ。こんな性能のレンズはそうそう存在しない。

兄弟のマクロスイターCでさえF1.9なのだ。当然マクロ域での被写界深度は極薄になる。それゆえ長くこのレンズはピントのあわないレンズと評されてきた。しかしここからは推論であるが、このレンズに問題があったのではなくボディーに問題があったのではないだろうか。このレンズの母艦であるSi2000/Si3000は35mmフィルムカメラである。35mmフィルムとは一番オーソドックスな缶入りのフィルムである。このフィルムは缶を開けるとトイレットペーパーのように芯にフィルムが巻きつけてある。その関係でフィルムに巻き癖が付いていてたわむ。

ごく一部の高級カメラRolleiflexSL2000FやCONTAX RTSⅢなどではこのたわみを解消するための工夫(SL2000Fはガイドレール、RTSⅢはバキューム)があるが当然Siシリーズにはない。そのためフィルムのたわみで僅かにピント位置が前後してしまうのである。普通の被写界深度のレンズであれば許容範囲であるが、被写界深度の薄いAUTO ALPA 50mm F1.7では致命的なのだ。一眼レフのレンズはフィルムがフィルム面に平らな状態で存在することを前提に設計してある。被写界深度の浅いレンズのピント精度が低い問題の多くはボディーやフィルムにある。

この問題はデジカメのようにフラットなセンサー面になることでようやく解決された。これによりレンズ本来の性能を発揮できるようになったのである。デジカメで撮影したAutoALPA50mmF1.7の写りをご覧いただきたい。

開放での撮影であるが、ピントはしっかりあるように見える。全体的にやや軟調であるがしっかりとした写り。トーンはクールトーンで諧調はやや少ない。ピント部分を拡大してみると。

ややフレアをまとった写りであるがピントの芯はしっかりとある。

評判とおり被写界深度は極めて薄い。しかしシロツメクサの茎の部分などしっかりと解像している。背景は柔らかく溶け独特の描写を見せる。ポートレート向きのレンズといえる。マクロ域の性能はいかに。

さすがにピント面が非常に薄い。手持ちの撮影は難しく僕もピンボケを量産した。何とかピントがあっていたのがこの写真。こんな被写界深度の浅いマクロレンズ何に使うんだと思いつつポートレート域ではかなり戦力になるレンズだ。

この写りを見る限り『ピントが合わない』ということはないようだ。僕の推論どおりカメラに問題があるかは別としてAutoAlpa50mmF1.7の『ピントが合わない』という評価は風評被害らしい。

こういったレンズの実力が再評価されるのは非常にうれしいことだ。今回使ってみてこのレンズの魅力と可能性を改めて実感した。国産のレンズには珍しくフレアによるベールと繊細で緻密な描写が同居している。ナイーブなポートレートに最適なレンズである。

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この記事を書いた人

フリーカメラマン上野 由日路

1976年生まれ。六本木スタジオを経てフリーに。音楽、舞台、雑誌、コマーシャルでのポートレート撮影をメインに活動。オールドレンズ、とくにシネレンズの特徴を活かした独特の表現で作品制作を行なっている。

近年オールドレンズの魅力を広めるための活動に力を入れている。「オールドレンズ写真学校」などのワークショップや「オールドレンズフェス」などのイベントは、その活動の一環。著書に「オールドレンズ×美少女」(玄光社)がある。

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