α7III + Makro Kilar 90mmF2.8
マクロ仕様のオールドレンズと言えば、キルフィットのMakro Kilar 40mmF3.5が有名だ。世界初のマクロレンズであり、モデルDが等倍マクロ、モデルEがハーフサイズマクロとなる。1950年代のレンズだと言うのに、強烈にシャープなマクロレンズだ。その兄貴分に相当するのが、今回紹介するMakro Kilar 90mmF2.8である。
左がMakro Kilar D 40mmF3.5、右が今回紹介するMakro Kilar 90mmF2.8だ。兄貴分という呼び名が似合う堂々とした佇まいだ。
このレンズはダブルヘリコイドを搭載し、等倍どころか2倍撮影可能な本格マクロレンズだ。しかしながら、人気はそれほどでもない。いや、知名度は申し分なく、中古価格も10万円前後とけっこうな値段である。にも関わらず、このレンズの魅力を熱意を持って語る人はあまり見かけない。
ダブルヘリコイドをすべて伸ばした状態。これで2倍撮影が可能になる。単焦点でここまで伸張するレンズもめずらしい。
考えてみれば、オールドレンズを使いたい人のニーズと、マクロレンズの機能性は微妙にすれちがう。「何もオールドレンズでマクロ撮影しなくても」というのが本音だろう。しかし、あえて言わせてもらおう。それは食わず嫌いというものだ。
フィルターポケットを装備し、ゼラチンフィルターが挿入できる。オールドレンズならではのギミックだ。
Makro Kilar 90mmF2.8は特徴的な描写がふたつある。ひとつは開放のフレアだ。光の状態を問わず、開放でフレアが発生しやすい。それこそ大口径レンズのようにシャドウが浮き、画面全体にやさしさが満ちる。無論、絞ればマクロレンズらしい切れ味を見せるため、強烈な緩急が楽しめるわけだ。
そしてふたつ目が二重バブルボケである。これこそが本レンズ唯一無二の描写だ。トリオプランよろしく画面いっぱいに真円の玉ボケが浮かぶのだが、その外周が二重になる。玉ボケのきれいなオールドレンズは数あれど、こうした二重のバブルボケはMakro Kilar 90mmF2.8だけの特権である。
銘板に「Kilfitt München」の文字が入る一方で、側面には「ZOOMAR」のブランドロゴも見受けられる。なお、Kilfittは後年、 Zoomarに社名変更した。
マクロレンズという名に惑わされてはいけない。Makro Kilar 90mmF2.8はまごうことなき個性派オールドレンズだ。
作例
α7III + Makro Kilar 90mmF2.8
絞り優先AE F2.8 1/400秒 ISO100 AWB RAW
画面上方の玉ボケを見ると、すべて二重になっているのがわかるだろう。この描き方が本レンズ最大の見所だ。
α7III + Makro Kilar 90mmF2.8
絞り優先AE F2.8 1/1600秒 +0.7EV ISO100 AWB RAW
盛大なフレアの片隅に、こっそりと二重バブルボケを配置する。二重バブルボケはとかく目立つので、こうしたさりげない使い方がオススメだ。
α7III + Makro Kilar 90mmF2.8
絞り優先AE F2.8 1/640秒 -0.7EV ISO100 AWB RAW
後方に強い点光源を配置し、くっきりと二重バブルボケを出してみた。周辺部でも円形の歪みが少なく、バブルの名に相応しい玉ボケだ。
α7III + Makro Kilar 90mmF2.8
F2.8 1/60秒 ISO100 AWB RAW(ストロボ使用)
最短撮影距離で香港10セント硬貨を開放撮影した。この硬貨は1円玉よりもひとまわり小さいサイズだが、これだけ大きく捉えることができる。
製品リスト
Sony
α7III
鳥井工房
SONYα7III/α7RIII/α9/α7II/α7RII Ever-ready case
JAY TSUJIMURA
Sony専用 New Floral Hot Shoe Cover カメラホットシューカバー
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この記事を書いた人

ライター・写真家澤村 徹
カメラとデジタル関係のフリーライターとして二十余年、書籍や雑誌を中心に執筆しています。デジカメドレスアップ、オールドレンズ、マウントアダプター、デジタル赤外線写真などが得意ジャンルです。
使用機種はLeica M10、Leica M8、α7IIなど。近著は「ライカMLレンズ・ベストセレクション」(玄光社)、「オールドレンズ・ライフ」(玄光社)他。